教養の海を泳ぐ

駆け出しエンジニア

学際科学科B群総合情報学コースについて

今回は思いっきり内輪向けになってしまうが、自分の所属する東大の教養学部学際科学科、さらにその中のB群総合情報学コース(なんて長い名前だ...)について書きたい。

はじめに

東大は2年春学期までの前期課程とその後の後期課程に分かれていて、その境目で進学選択振り分け、いわゆる「進振り」が行われる。前期課程の学生は全員が教養学部に属し、進振りによってめいめいの学部に進むわけだが、実は駒場に残って教養学部をコンティニューするという選択肢もある。それが後期教養であり、圧倒的な少人数授業で他学部とは一線を画した、濃密な授業が行われている(気がする)。

この記事を書こうと思ったのは、自分も進振り前に情報の少ないこの学科についてめちゃめちゃ調べた記憶があるからである。もし弊学科に進むか迷ってるという下級生がいたら、この記事がその学科選択の一助になればと思う。

学際科学科とは

学際科学科のHPにはこうある。

21世紀に入り、気候変動やエネルギー問題、地域間格差問題、科学技術や情報技術活用のあり方など、複雑かつ地球規模の問題への対応の必要性が高まっています。こうした既成の細分化された個別の学問領域によっては扱えない現代社会の重要な課題に対し、文理を問わず柔軟な思考と適切な方法論を用いて新しい課題に総合的な視点をもって対処できる人材の育成が、今まさに求められています。こうした要請に応えるべく、文理融合の教育研究を実現する新学科として新設されたのが学際科学科です。

なるほど、説得力がある。

学際科学科は以下の通りA群・B群に分かれた後さらに2つのコースに分かれるので、合計4つに分かれる。

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出典: HP

この中で自分が所属するのが、総合情報学コースである。圧倒的少人数(多くても10人程度)で、情報科学認知科学を中心に学ぶことができる。駒場の15号館が拠点だ。

ちなみに同じB群の広域システムコースの人とは普通に交流があるが、A群との交流は全くない。悲しいなぁ。

なぜこの学科・コースを選んだか

自分は理Iの学生だったが、工学部に進むことに抵抗があった。というのも、自分は高一の文理選択の時から散々迷ったような人間で、興味の幅が広く文系から理系まであった。サークルもアジアの国々の社会問題について調べるリサーチ団体や文I生向けのゼミに属していた。ただITやプログラミングについても漠然と勉強したいと思っていた。そのため、工学部に行って理系に全振りするよりかは、この学科に進んで文理問わず広く興味に合うような分野を選択して、教養を深めて行きたいなと思ったのである(とか言いつつも結果的にほぼコース科目しか取ってないです)。教養学部は他学部聴講の単位認定もゆるい。

代表をやっていたサークルの活動拠点が駒場だったというのも大きい。進振り前は勉強の他にもインターンや課外活動などしたいという気持ちがあった。どうしても工学部で週20コマ以上拘束されてしまうと両立は難しいので、コマ数に余裕のある教養学部の方が良いと思った。

ただ、少人数学科にありがちだが、成績の良い人が志望していると引っ張られて進振りの点数の閾値が高くなる。自分も普通にギリギリだったので、なんとか入れて良かった。前期教養の頃からちゃんと勉強しておきましょう。

カリキュラムについて

各先生の専門は、以下を見てもらえば一目瞭然である。非常に多岐にわたる。

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出典: HP

自分はあまり認知科学に興味はないのだが、この学科にいると情報科学認知科学の接続について勉強することができるので面白い。

HPから得られる情報には限りがあるので、ここで少し特徴的な授業について列挙したい。

・プログラミング基礎(2Aセメ),プログラミング演習(3Sセメ)
必修。自分たちはプロ基礎ではC++、プロ演ではPythonを学んだ。弊学科は進学枠が文理で同数なので、当然プログラミングを全く知らないという学生もいるのだが、そういう人たちにも配慮して(?)丁寧に初歩から教えてくれる。自分も進学前はHTMLとCSSしか触ったことがなかったが、授業のおかげでだいぶ色々書けるようになった。

・外国語論文講読
必修。担当の先生が選んだ本や論文を、グループで輪読していく。もちろん英語である。担当の章を完全に理解してスライドにまとめなければいけないので、普通に大変。

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今学期泣きながら作ったスライド表紙

科学技術社会論(Sセメ)
必修。STS(Science, Technology and Society)という分野で、社会において科学技術が果たす役割について、様々な概念を導入して整理しながら学ぶ。重い授業だが自分は嫌いじゃなかった。最終レポートはWELQ問題とPageRank(Googleの検索アルゴリズム)について5000字ぐらい書いた。

・人間情報学VI(Sセメ)
オムニバス授業で、6人の先生が主に認知科学についてのお話をしてくださる。茂木健一郎先生が来る。茂木先生はとても気さくな方で、授業中も生徒とインタラクティブに対話しつつ講義を進めてくださったのを覚えている。

情報工学実験(Sセメ)
必修。電気系の各種測定実験やロボット実習など、理系情報学徒として最低限の実験を行う。レポートはOKをもらえるまで提出扱いにならないので、学期末まで貯めると死ぬ。

・栃木実習(Sセメ)
実験のコマを振り替えて、栃木実習に参加することができる(もちろん振り替えなくても良い)。2泊3日で日光にて水質・生物相の調査や地層の観察,化学測定などを行う。決して温泉旅行ではない。

情報工学IV(Sセメ), 情報工学V(Aセメ)
Javaを使って3DCGを学ぶ。Sセメ・Aセメと履修するとJOGLというライブラリでこんなものが書けるようになる。課題が普通に重い。

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メンガーのスポンジ

・総合情報学実習(3Aセメ)
必修。4年の研究室配属前のこの時期に、4週間ずつ3人の先生のところを回って課題をこなしていく。自分の興味のあることについて先生の個人指導を受けつつ勉強させてもらえるという大変贅沢なカリキュラムである。先生と1on1なので手抜きが出来ない。

一つ言い忘れたが、文理融合と言いつつも弊コースは特に情報学色が強い。カリキュラム上コース科目をある程度取らないと卒業できないので、本当に文理融合的な勉強がしたいのなら他のコースを選ぶことをオススメする。

3Aセメスター現在

課題の締め切りに追われながらも、毎日楽しく勉強している。課題は普通に分からないものもあるので、個性的な学科民たちと一緒に助け合って生きている。研究室がもはや選び放題なので、成績による競争がないというのが一番大きいかもしれない。

ただ注意したいのが、弊学科はあくまで「きっかけ」を与えてくれるに過ぎないという点である。広い分野をカバーする代わりに、理論的なことなどは授業では深く突っ込まない。興味を持った事柄を主体的に勉強していける人でないと、卒論を書くときなどに結局「自分は何がやりたいのか?」が定まらずに苦しむかもしれない。工学部は長期休みにインターンに参加させてくれるなどと聞くが、弊学科にはそんなものはない。強く生きていくしかないのである。

最後に

結局「教養」とは何だろうか?

自分は、「教養」は世界を認知するための受け皿だと考える。別に教養を深めなくても生きていくことはできるが、教養があった方が得られる情報をより味わうことができ、何倍も人生は豊かになるんじゃないだろうか。

まだまだ世の中知らないことだらけですが、引き続き教養を深めていきたいですね。

もし気になることなどあれば、質問してもらえれば追記するかもしれないです!

P.S.

学祭を科学する学科ではないです。